令和6(2024) 年始のご挨拶

護蹄研究会 会長 阿部紀次(THMS,酪農学園大学特任教授)

護蹄研究会 会員の皆様および当会ならびに牛の蹄管理に関してご興味をお持ちの皆様、

日頃から、牛の健康のため、農家経営のため、そしてご自身の経営のために尽力されておられることに敬意を表します。皆様にとって令和5年はどのような1年でしたでしょうか。新しい年にも更なるご努力でこの分野から畜産を支えていただきたいと思います。

さて、昨年8月、護蹄研究会としましては始めての地方開催(北海道)にて、削蹄師と獣医師専門コース分けした実習形式の学術集会をとりおこないました。今回の北海道大会では、実習の中身を削蹄師コースと獣医師コースに分けました。これは私の考えからでした。対象としている動物と、蹄という器官は同じであり、またその健康を望む目標も同一でありながらアプローチの仕方が異なる両者が一堂に会して垣根を越えて“喧々諤々”議論するのが”ゴテイケン”の真骨頂という観点からすると、後ろ向きに捉えられた向きもございました。世間では、削蹄班を設定して蹄病処置も含めて行っている農場もあります。そして削蹄師もできる限りの技術を発揮しています。しかしながら、いずれにしても、局面的には個体治療にせよ群管理にせよその裏に獣医師のサポートが必要なはずです。その両者の組み合わせこそ農場が欲しているコラボレーションの目指すべき形だと思うのです。蹄管理の分野で何となく削蹄師さんの方が信頼度が勝り、獣医師はそれに甘んじているように想うのは私だけではないでしょう。「獣医師として出来るべき技術の確認」のための実習でした。あえてそこを区別しなければならないほど蹄病治療ができる獣医師を養成することが急務と考えたことから、大学のスタッフと一緒に獣医師向けに実習を行いました。

削蹄師コースの方は、午前の実習では、公益社団法人日本装削蹄協会の推奨方法(日装式)を石賀信宏指導級削蹄師が解説とデモンストレーションを行う一方で、午後からはアメリカナイズされたダッチメソッド(機能的削蹄)を林タカヒト&佐藤摩耶削蹄師、他皆々様のおかげで、現在日本の2つの主流の削蹄方法をデモンストレーションできました。今回は、大学側の都合で生体を使った実習のハードルが高く、屠体蹄で行いました。そのため、機能的削蹄を当てはめづらかった部分もあったようですが、その方法論は理解されたようです。今後機会があったら実牛で行えればと願っております。

会場提供の準備、根回しの段階から、実習準備、実践。後片付けまで運営すべてに率先して関与していただいた酪農学園大学外科学ユニットの村上先生には、まず御礼申し上げなければなりません。村上先生は根室地区NOSAIに所属されていた頃からの旧知であり、その頃から真面目かつ積極的なお仕事ぶりと温厚な人柄がきわだっておいででした。酪農大では一緒に仕事はできませんでしたが、いつでも連絡し合える仲ですし、僭越ながら講師の佐藤綾乃先生も、石川高明先生も同様に、蹄管理研究・教育に、経験も実績も熱意も十分とお見受けします。酪農大のこの体制が全国の大学としては最も整っているのではないでしょうか。蹄管理に関する教育研究の拠点となっていただけるよう、当会もサポートしていきたいものです。

それから、今年の9月16日から20日は国際蹄病学会がベニスで行われます。そろそろ積み立てしないと、、です。

Lameness in Ruminants Conference 2024 – Home (lamenessinruminants2024.com)

さあ、今年も元気に頑張っていきましょう~!